テキストコンテスト参戦後記  或いは幾つかの疑問に対する私見的回答

今回のテキコンにおいて、私は入選を逃した。敗者の長話などくだらないとは思うのだが、寄せられた感想に「理解不能」とのコメントがあまりにも多かったため、本意ではないが解題じみたことを書いておくことにしよう。敗者の長話は格好悪いが、「分からない奴が悪い」で片づけるよりはいい。

ここで読者の方から頂いたコメントを少し引用させていただきたいと思う。このコメントへのレスが「彼女」の解題の一部となる。


ひょっとして「彼女の皮を脱ぎ去った」というのは比喩でなく、実際に老婆は美女の皮を被っていて、「僕」もまた若い男の皮を被っていたということなのでしょうか。これだと何が「馬鹿には見えない服」で「裸の王様」なのかわかりませんし、違うとは思うんですけどね。


このコメントに対し、私はこう答えよう。「何も違っていない。」
激しい夜を過ごした後、主人公はシャワーを浴びに行く。若い男の精液という目的を達成した老婆は、着ていた美しい女の皮を脱ぎ捨て精液をすする。それをみた主人公は・・・という、ただそれだけの話であって、ラストの部分において小難しい比喩など存在しない。
それでは何が「馬鹿には見えない服」で「裸の王様」なのか。

このテキストを難解に思わせてしまったのは後半の説明不足と、恐らくこれがもっとも大きな問題だったであろう「裸の王様」、そして「馬鹿には見えない服」の解釈であると推察する。
有名な童話の中で裸の王様は何をしたのか。見えてもいないものを「見える」と言った。悪い2人組を疑おうともせず、体裁ばかりを気にして本質が見えていない。「彼女」で言うならば‘服を着ていることを見抜けない’、本質が見えていないのが裸の王様であり、馬鹿には見えない服とは、‘表面だけを見ている者にはそれが服であることが見抜けない服’、若くて美しい女性の皮である。

お分かりいただけただろうか。と、ここまで書いて反省。やはりあれだけの文章では分かりづらい。もう少しあの会話を引き延ばして説明しておくべきだったように思う。私の力不足であり、この失敗は次回につなげたいと思う。
さて、読者の疑問にお答えしたところでもう一つ、今回審査員をしてくださったまさゆき氏の疑問にも答えておくことにしよう。以下3行は彼の批評文からの引用。


僕にはどうしても最終部分の『名前も知らない若い男』が誰(何)なのか解かりませんでした。伏線がある様には見えないし、何かの暗喩かなとも思ったのですが・・・ 重要なポイントかもしれないので、謝りたいと思います。すいません(汗)。


「名前も知らない若い男」は誰なのか。別に誰でもない。伏線も無く、暗喩でもない。それは少なくとも私にとってはどうでもいい問題だ。
この最後の一行の役割は、「僕も彼女と同じように皮をかぶっている」と読者に思わせることであり、今回のテキコン参戦で私が伝えたかったメッセージである、「人は例外無く、馬鹿には見えない服を着ながら生きている」ということを伝えることである。ただ、その服の解釈が余りにも私感の中に埋もれてしまっていたため、読者の方々には分かりづらかったかもしれない。反省。




兎にも角にも、今回の参戦によって多くの反省点を見いだせたことは大きな収穫だった。後半の展開にも問題があったように思う。過剰な性描写でお気を悪くされた方もいらっしゃるだろう。ここに謝罪させていただき、次回はもっと分かりやすく、読みやすく、そしてできれば読後感の良いものを書き上げることを心に誓い、解題を終わりとする。

最後に、テキストコンテスト第16リーグで共に戦った9人の皆様、今回の審査員を務めていただいた雑然上等まさゆき様、寝ぼけ屋ヤマグチ様、テキストを読み、感想を送ってくださった閲覧者の皆様、そしてテキストコンテスト主催者、レティクル座妄想TAKEX様に心よりお礼申し上げます。

テキストコンテストに乾杯。


2003年2月10日  Webサイト‘記念日’管理人  木戸